SERIAL
『 酒井 愁 - SERIAL 』

〜第二幕〜


〈主人公なら最後まで演じきれ〉




先に触れた通り、君の人生は君が主役だ。
隣の奴もお袋も親父もアイツもコイツも俺も只の脇役だ。

只の君の人生を彩る道化に過ぎない。

その代わり俺の人生においての君の役割は脇役だがな!

脚本も演出も含めて君の自由でいいんだ。

どんな主人公を演じたいのか頭の中で思い描いてみろよ?
幼い頃描いた夢と、今そこに居る自分が違う事なんてご愛嬌だぜ?
大概の人間はそうなんだから!

いつでも人間の生きる活力源に成りえるのは“根拠の無い自信”だ。
どんなド勘違いな事でも構わない。
どんな小さな事でも構わない。
その自信を胸に秘めて何かを掴んだ自分をイメージしろ。
例えばマラソンにトライする人間ならば決して自分が棄権する場面は想像しないだろう?
自分がゴールテープを切るイメージを頭に浮かべて臨む筈だ。

身体の強度では無い。
ましてや心の強度でも無いのだ。

想像力だ。

妄想力だ。

俺はドラムをやっているのだが頭の中で思い浮かべたフレーズは必ず体現出来る。
口で歌える物は大抵は体現出来るんだ。

それが人間の底力だ。

その底力は人間ならば必ず誰しもが持ち合わせていると俺は信じている。

そして人間の最大の欠点はいつしか自信が慢心に変わってしまう事である。

覚えておいて欲しい。
自信と慢心は紙一重だ。

自信は人を育てるが慢心は人を滅ぼす。

“才能”と言う物がこの世に、そして人それぞれに何かしら備わっているとしたらこの自信と慢心の見極めをきちんと出来る能力なのでは…?

昔俺は常に思っていた事がある。
“才能の無い奴に頑張れって言う事は残酷な事だ”…と。
そんな流行り歌が街に流れまくっていた時、俺は「ケッ!」と鼻で笑っていたものだ。

しかしそれは大きな間違いであったと俺は気づいた。

それぞれトライする事、しようとしてる事に才能が必要なんて事はハナから無いって事さ。

もし才能ってもんが必要とするならば何か一つだけでいい…
夢中になれる物を見つけだせる力…なのかもしれない。
人より何かが長けてる人間が凄い奴では無いんだ。
平凡非凡、様々な人生があるだろう。
何一つ結果を残せて無いと嘆くなかれ!
どんな小さな事でもいいんだ。
君を…君の事を求める物が一つでもあるのなら君が今迄辿って来た道は決して間違いじゃない。

ただ君は見つけられてないんじゃないんだ。

見落としているんだよ。

何気ない日常において見落としている何かが無いかアンテナを張り巡らせろ。

そこに必ず何かがある筈だ。
君を求める何かが。

そして君が求める何かが。

オマエはオマエの人生の主人公だ。
不甲斐ないストーリーで主人公の良さを殺すんじゃねぇ。